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生きものこぼれ話 令和6年度「新浜ビオトープ田んぼプロジェクト―田植え体験・生きもの観察会―」を開催しました!

投稿日:2024年07月18日(木)

令和6年度「新浜ビオトープ田んぼプロジェクト―田植え体験・生きもの観察会―」レポート サムネ
初夏の風物詩といえば田植え!
今年も「カントリーパーク新浜」で、昔ながらの田植え体験と周辺の生きもの観察会を行いました。
見て、さわって、嗅いで……全身を使って生きものたちを感じてきました。

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仙台市東部沿岸地域に位置する新浜は、開墾から400年あまり、自然と調和する暮らしを紡いできた集落でした。
東日本大震災により集団移転の対象地区となりましたが、人と自然が共存する里浜の再生を目指して跡地に作られたのが「カントリーパーク新浜」。田んぼ・水辺・砂地の3種のビオトープ(地域の野生の生きものが生きている場所)で構成されています。
今日は、田んぼと水辺のビオトープを中心に活動します。

田植えをするビオトープ田んぼ
田んぼは代掻きも済んで田植えスタンバイOK!

ちなみに、田んぼを「ビオトープ」と称しているのは、「除草剤や化学肥料を使わず、さまざまな生きものの力を借りた昔ながらの農法を通して環境を整える」という、生き物との共存を目指す空間だからです。

3つのビオトープ解説板
3つのビオトープについての解説板

 

■田植えの部■

最初に、「カントリーパーク新浜」の遠藤源一郎さんから開会のご挨拶をいただいたあと、代表の澤口義男さんから、田植えについての説明を受けます。


源一郎さん
遠藤源一郎さん(中央)
 

澤口義男さん(左)
澤口義男さん(左)

会場には、苗床で大事に育てられたイネの苗が続々と運び込まれてきます。
これから植えるのはミヤコガネという、もち米の品種です。

さらに今回は、田んぼにイネを植える場所の目印をつける「枠引き」という作業の実演解説がありました。
田植えの先生・瀬戸勲さん(新浜町内会顧問)が巨大な櫛のような道具で田んぼにタテ・ヨコの線を引いていきます。線はイネの生育やその後の除草作業などに程良い間隔をとってあり、その交わるところに数本ずつ苗を植えていきます。

ワグヒギ実演解説
等間隔の格子になるように枠を引く

各自、苗を受け取ったら、いよいよ田んぼへ。瀬戸さんの動作をお手本に、田植えの始まりです。
長靴は泥の中で脱げてしまうので、田んぼには裸足で入るのがおすすめとのこと。参加者の多くが田植え初心者なうえ、そもそも裸足で泥の中に入る機会ってなかなかありませんよね。田んぼへの「はじめの一歩」はやや緊張気味でした。

いざ田んぼへ
いざ、田んぼへ!(右端が瀬戸勲さん)

最初はうまく歩けない
最初はうまく歩けない……けど意外とキモチイイ?

ぬるぬる、ぷにぷに? 未知の感触に最初は戸惑うものの、キメの細かい泥にもすぐ慣れてどんどん植えていきます。コツをつかめば、次第にスピードが上がっていきます。みんなの歩んだあとには、きれいな苗の列。
「おコメ作りがこんなに大変だなんて思わなかったよー」「これから大事に食べよう」等々、作業をする子どもたちから感想が飛び出します。

交点に植えていく
枠引きでつけた線の交点に植えていく

田植えの最中に生きものにも出会えました。

カエルの卵発見
カエルの卵を見つけたよ!

彼方に船形連峰
田植え隊の後ろには苗の列、彼方には船形連峰がうっすらと

こうして、田んぼいっぱいに苗が植えられました。
泥んこの足を洗ったら、次は周辺の生きものたちに会いに行きます。

■観察の部■

ここから参加者は2班に分かれ、田んぼ脇水路の周辺と、田んぼの東側に連なる高木林周辺の2カ所のフィールドで観察を行いました。

水辺での観察の前には、講師の棟方有宗教授(宮城教育大学)から、「カントリーパーク新浜」の3つのビオトープについて説明がありました。

棟方教授(右)によるビオトープや生態系などについてのお話
棟方教授(右)によるビオトープと生態系などについてのお話

続いて水路に移動し、生き物について学んでいる学生さん達やOBの方のサポートのもと、網の使い方から教わって、採集・観察を行いました。

オタマジャクシ(たぶんアマガエル)
先に学生さんが採集してくれたオタマジャクシ(おそらくニホンアマガエル)

水路での生きもの採集組写真
水路での生きもの採集はオトナだって楽しい

アマガエルつかまえた!
アマガエルつかまえた!

この水路には、井土メダカ(ミナミメダカ)という、地域固有の遺伝子をもつメダカがいます。
本来は仙台市沿岸部の井土地区を中心に生息していた固有種でしたが東日本大震災で被災・流失し、一時は絶滅が危惧されました。
しかし、震災前に宮城教育大学が調査・保全のため同地区の野生メダカを採集していたことから、宮城教育大学・仙台市八木山動物公園・市民が連携し、以前の生息域での復活を目指す「メダカの里親プロジェクト」が進められました(現在は終了)。
その一環として「カントリーパーク新浜」でもメダカのいるビオトープづくりが行われ、ミナミメダカを観察できるようになりました。

井土メダカ(ミナミメダカ)ほかのみなさん
井土メダカ(ミナミメダカ)、ゲンゴロウ、トノサマガエルらしきオタマジャクシ

この日はメダカのほか、ドジョウ、ヤゴ、アメンボ、ゲンゴロウ、数種のオタマジャクシや、水上を移動するハシリグモなどにも出会うことができました。

 * * *

さてもう一方のフィールド・高木林周辺では、平吹喜彦教授(東北学院大学)に、植物の視点を中心にガイドをしていただきました。
まずは田んぼから茂みを抜けてマツ高木林のある歩道に向かいます。

平吹教授
平吹教授のガイドは田んぼ周りの茂みに咲くハマナスからスタート

田んぼの東側はクロマツ・アカマツ・コナラ等を中心とした高木林〜湿地〜運河〜砂浜〜海という、陸と海をつなぐエリアになっています。震災前には海風や塩害から集落を守りつつ時に建材や燃料にもなった松林があり、そこを生息域とする動植物や昆虫、キノコなどが織り成す生態系も人々の暮らしを支える大切な存在だったそうです。

東日本大震災の大津波によって集落と周囲のほとんどの動植物が被災・流失しましたが、地域の人々を中心に「陸と海のつながり」と「生態系の保護・保全」を意識した復興まちづくりが進められたことなどから、生き延びた種の自律的な再生が促され、現在では豊かな生態系を観察することができるようになってきました。

13年間でこんなに育ったクロマツ
震災後に芽を出し13年間で大人の背丈を超えるまでに育ったクロマツ(手前右手)

再生した高木林
被災から自律的に再生した高木林

初夏の陽気で気温が上昇、木陰の涼しさに癒されながら進んでいきます。
高木林は、樹間や下方にさまざまな植物が茂っていたり、つるとなってからまっていたり、お互いに影響しあって生きている様子が見てとれます。
さっそく樹々の間に、ハチミツに似た香りを放つニセアカシアの花をよく見かけました。手に取って微かな甘い香りを確かめます。

ニセアカシアの香りを確認
ハチミツの香りがするニセアカシア

さらに周囲を見渡すと、白くて素朴な花をもつ在来種のノイバラが芳香を放っています。
ほかにも足元のヨモギの葉を嗅いでみたり、「見る」だけでなく五感を研ぎ澄ませると、観察がもっと楽しくなります。
植物は「におい」も重要なチェックポイントです。

ノイバラの香りもチェック
ノイバラの香りもチェック

ヨモギは草餅のかおり
ヨモギは草もちの香り

さらには、可能であれば触ってみることも大事。
ここでちょっと不思議な木、クスノキの仲間のシロダモに遭遇しました。
しっかりした緑の葉の上に、ベージュ色の垂れ下がった葉が伸びています。これは枯れているわけではなく、春先に芽吹いた新葉(赤ちゃんの葉)が開いてきたところ。
成葉(おとなの葉)は表がやや光沢がありますが、新葉は産毛のようなものに覆われていて、触るとビロードのような触感にうっとり。同じ枝から2種類の葉が出るなんて不思議ですね。
なんと、仙台あたりが分布の北限なのだそうです。

シロダモはいろいろ比べて面白い
成葉と新葉、葉の表と裏、比べてみると面白いシロダモ

その他にも、ヤマグワやカモガヤ、アブラナ、スイカズラなど、高木林をほんの数十メートル行き来しただけで、たくさんの植物に出会えました。

熟しきってない残念なヤマグワの実 
残念! 熟していなくてお味見できなかったヤマグワの実

田んぼや水路、茂みや林といろいろな環境が連なり、生きものを育んでいるカントリーパーク新浜でした。
参加されたみなさんは、ここでの体験を通して、たくさんの命がつながり、バランスを保ちながら生きていることを、視覚・嗅覚から足裏の触感まで、全身を使って感じとれたのではないでしょうか。

秋には、この日植えたイネを収穫する「稲刈り・生きもの観察会」も予定していますので、お楽しみに!

苗が整然と並ぶ田植え後の田んぼ

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