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TOPサロン講座「日本で一番大きなビオトープ『小岩井農場』」を開催しました

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「日本で一番大きなビオトープ『小岩井農場』」を開催しました

投稿日:2024年07月11日(木)

このイベントは終了しました。

たまきさんサロンスタッフです。
6月16日(日)に、(公財)小岩井農場財団評議員の野澤日出夫(のざわ ひでお)氏を講師にお迎えして、「日本で一番大きなビオトープ『小岩井農場』」と題したサロン講座を開催しました。

なぜ小岩井農場は、日本で一番大きなビオトープと言われるのか? 火山灰土、湿原地帯であった広大な不毛の大地を、いかにして緑豊かで多様な生き物が棲む農場に作り変えることが出来たのか? 創設から133年の取り組みの一端を、SDGsに即したビオトープの理念とともに教えていただきました。


野澤さんはNPO法人日本ビオトープ協会主席ビオトープアドバイザー 相談役を務めていらっしゃいます。


【今、地球環境は・・・】

まず現在の地球環境がどのような状況におかれているのかについて、野澤さんから説明していただきました。
猛暑、干ばつ、森林火災、大規模洪水、海水温上昇など、地球温暖化によると考えられる異常が世界各地で頻発しています。

地球温暖化に対抗するためには、まずは化石燃料の使用を減らすことを優先し、再生可能エネルギーに転換していくことが急務であるというお話でした。


この図は、SDGsケーキモデルといわれるもので、SDGsの概念を表す構造モデルの一種です。それぞれの開発目標の関係性が立体的に視覚化されていて、全体像が把握しやすくなっています。
全17項目は、「生物圏」「社会圏」「経済圏」という大きな3つの階層に分かれて構成されています。
すべての土台となるのが「生物圏」で、「海の豊かさ」「陸の豊かさ」「安全な水」「気候変動に具体策」といった地球の自然環境に関する目標が示されています。私たちにとって必要不可欠とも言えるこの「生物圏」の目標が達成されてはじめて、健康や教育や暮らしなどの社会環境が整備でき、それらが整うことが経済の基盤を作り上げることにつながっていくという考え方です。
「経済圏」ばかりを優先させてしまうと、「社会圏」や「生物圏」に多大な負荷がかかってしまうことを示しています。
生態系維持保全ビオトープは、この「生物圏」に繋がるものです。

「ビオトープ」という言葉は、「生き物 ― 場所」というギリシャ語の造語です。(ドイツ語で「BIOTOP」、英語で「BIOTOPE」)
それは以下のことを意味しています。

  • 単に「生き物のいる場所」ではなく、その生き物にとって「命のみなもと・・・心地良く棲息できる生態系」を言う。
  • 希少生物・絶滅危惧種は、環境変化に敏感な生物であり、その生態系・自然環境保全が大切である。
  • 環境変化に敏感な生き物が生息できる環境は、人類にとっても「心地良く豊かに生き延びる為の環境」である。
この考え方を受けて、1987年にドイツ連邦自然保護法に「生態系・ビオトープの保護保全」と言う要綱が法制化されています。
また、経済優先で希少な生態系が改変され失われる危機感の中で、1993年に「日本ビオトープ協会」が発足しています。(創設31年目)

【小岩井農場の歴史】

岩手県岩手郡雫石町に広がる「小岩井農場」は、かつては約4000ha(多賀城市の約2倍の面積)もの不毛の大地でした。
鉄道建設で荒廃した自然環境、山林、農地などの復元から、農場建設の事業は始まりました。
元々この土地は、秋田駒ケ岳及び岩手山の火山灰が堆積した酸性土壌でした。まず土壌改良として、北上山地から産出する石灰岩から作られる石灰(アルカリ性)が大量に投入されました。
やせた土壌には、自給肥料(堆厩肥)のために雑種牛を導入、家畜糞尿、斃死家畜を購入して液肥として用いたそうです。
低湿地地帯の克服には、明治期には地下1m以深にアカマツの丸太で暗渠排水を構築しました。以後、大正期からは素焼き土管や粗朶を使用、昭和40年代以降は、塩ビパイプと粗朶を使って、農場内圃場650haの内約95%に暗渠敷設が行われ、低湿地帯が克服され牧草生産ができるようになりました。
現在でも、暗渠排水を止めるだけで、すぐに農場にビオトープ池が出現するということです。
「小岩井」という名称は、農場創設に深く尽力された小野義眞(日本鉄道会社副社長)、岩崎彌之助(三菱社二代目社長)、井上勝(鉄道庁長官)のそれぞれの苗字1文字を取って名付けられています。
明治32年(1899年)に岩崎久弥が農場を継承し、本格的な農牧事業に取り掛かりました。
牛や羊を外国から輸入、植林された樹木もまだ小さく、農場全体が見渡せたほどだったということです。

この頃すでに、岩崎は「今の利益ではなく、農場づくりは100年の計で」という持続可能な開発目標を掲げていました。

現在の整備された緑豊かな小岩井農場があるのは、この理念の賜物なのです。
現在は、「山手線」に囲まれた面積の半分位の約3000haの敷地に、農場、牛舎、牧草地、観光用に整備された「まきば園」、乳製品工場、家畜糞尿から4000kwh/日の電力を生み出すバイオガス発電所などが散在し、その2/3を占める約2000haの森林は、保水量800万トンという文字通り「緑のダム」となっています。これらは、猛禽類のオオタカに営巣地と獲物を捕らえる狩場を提供しています。
現在の飼養牛(乳牛・和牛)は2600頭で、これは粗飼料の全量自給を可能にするために計算された頭数だそうです。



創設133年目(明治24年 1891年創業)を迎えた農場には、国指定の重要文化財が21件、国指定の名勝1件が残されていて、近代建築史や近代農業史の上からも貴重な文化財となっています。



【持続可能な未来へ】
現在ある仕組みの上にたって、未来を模索しながらそれぞれが将来に向けて積み上げて実行していく「フォアキャスティング(Forecasting)」の手法ではなく、最初に将来の目標を定めて、そのために今何をすべきかを遡って考えて実行する「バックキャスティング(Backcasting)」の考え方が、持続可能な社会を目指す上では重要だと教えていただきました。    
未来の子供たちに自然豊かな環境を残すことが、私たちの責務であると、改めて感じました。
そして、すぐにでも小岩井農場に行ってみたいと思いました。
小岩井農場が日本で一番大きなビオトープと言われる所以がよくわかりました。そして、単に観光農場ではなく「環境農場」であるという野澤さんのおっしゃる意味もよくわかりました。
講師の野澤さん、ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。


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