「生ごみからエネルギーを作ってみよう!〜親子で体験するバイオガス実験!〜」を開催しました。
投稿日:2022年12月04日(日)
たまきさんサロンスタッフです。
11月26日(土)のサロン講座は、東北大学大学院農学研究科 多田 千佳 准教授を講師としてお迎えして、生ごみからエネルギーを作り出す方法や、実際に生ごみから作られたバイオガスを使った実験などを教えていただきました。
日々、私たちの生活から生じる“生ごみ”は、そのまま捨ててしまえば“ごみ”ですが、工夫次第でエネルギーを生み出す材料にも変えることができます。微生物の力によってバイオガスが作られるしくみを、実験を通して楽しく学びました。
講座のはじめに、先生からの質問です。「エネルギーにはどんな種類がある?」
参加してくれた子どもたちからは、「火力」「風力」「水力」「原子力」などの答えが挙げられました。
今回は、家庭でも都市ガスとしても使われているメタンガスのお話です。燃やすことができ、効率の良いエネルギーとして使うことができるガスです。
メタンガスは、自然界においても普通に発生するガスです。例えば、海や湖から、水田から、そして牛などのゲップの中にも含まれています。
このガスは、微生物の働きによって作り出されます。微生物とは、1000分の1mm〜10分の1mmという目には見えない小さな生き物のことです。
牛の胃の中では、牛が食べた草などを多くの微生物(細菌)が分解消化しています。その過程で、メタンガスや二酸化炭素が作られます。体からゲップとして出されるこれらのガスは、実は温室効果ガスとして地球温暖化にも影響を及ぼしています。その反面、燃えるメタンガスはエネルギーとしても利用可能なガスだとわかっています。
では、牛の胃のような仕組みでメタンガスを作り出すことはできないでしょうか?
まずは、牛の胃の中の状態を想像してみましょう!
それぞれの班の中で、話し合って条件を出してもらいました。
いくつかの重要な条件が見えてきました。「食べ物が必要」「水が必要」「微生物が必要」その他にも、適した「温度」「pH」「運動」などが必要なことがわかりました。
*牛は、反芻することによってたくさんのアルカリ性の唾液を胃に送るため酸性の胃液が薄められ、胃の中がpH 6.9位になっているということです。そこにいる細菌もこれに近いpH7.5位が一番元気に活動できるそうです。
この結果をもとに、さっそく実験開始です!
今回の実験では、ペットボトルを牛の胃の中に見立てます。
@参加者に持って来てもらった生ごみ100gに水400mlを加え、ミキサーで粉々にしてボールに移します。
B重曹を使ってpHが7.5位になるように調整します。(「なんだか料理教室みたい」という声も聞こえてきました)
Cこれを、あらかじめ細菌の入ったペットボトルに入れます。
この中には、牛糞から取った種菌が入っています。
酸素を嫌う微生物なので、入れたら素早くふたをします。
Dガスバッグの付いたふたをします。
E装置完成! 35℃程度の温かい場所に置いておくと、自然に発酵して、3週間位経つとガスがバッグいっぱいにたまります。
※誰にでも簡単に作れる装置ですが、最初の1週間で出たガスは捨てる必要があります。水素が含まれ、またメタン濃度が薄いため、爆発性があり引火すると危険だからです。また、有毒な硫化水素も発生しますので、脱硫装置も付ける必要があります。
さあ、これでメタンガス発生装置は完成しましたが、3週間待てないので、今回は先生が用意してくれたガスバッグを使って実際に火がつくのか、お湯を沸かすことができるのか、実験してみましょう!
@空き缶に水を200㎖入れます。アルミ箔でふたをして、温度計をセットします。
Aガスバッグに火をつけて、空き缶の底にその炎を当てます。メタンの青い炎が見えます。目標は60℃です!火が消えないように両手で優しく袋を押しながらガスを出していきます。力加減がなかなか難しい作業です。
B10分ほどで、お湯が沸きました!
試しに飲んでみます。ちゃんと熱いお湯になっていました。
さあ、ガスバッグを何袋使ったでしょうか?
3袋半で目標達成した班もありました! 平均すると4袋でした。
実験を通して、空き缶1杯の水をお湯にするのに、どのくらいのエネルギーが必要なのかわかりました。そのエネルギーを作り出すためにどのくらいの生ごみが必要なのかもわかりました。
これが、今日の実験の目的だったのです。
日本人は、1日平均1人あたり約200gの生ごみを出していると言われています。生ごみ200gから9.3ℓのバイオガスを取り出せることがわかっています。これは、スープ3杯を温めることができるエネルギーなのです。
今回のような仕組みで作られたバイオガスは、バイオガス用のガスエンジンを回して発電することが出来ます。電気自動車用や、ガスを燃焼させるガス灯に使うことも出来るということで、東京パラリンピックの聖火を集火する宮城県集火式(2021年8月16日でも、バイオガスが使われたということが、先生から紹介されました。
家庭用に小型化されたバイオガス発生装置も開発されていて、300gの生ごみを4回入れれば、100ℓのバイオガスを作ることが出来るそうです。また、ガスが出た後に残る「消化液」は、植物を育てる液肥としても利用されているというお話でした。
世界的にもエネルギー危機が懸念され、化石燃料使用による地球温暖化問題も深刻化しています。再生可能エネルギーが求められている時代にあって、バイオガスエネルギーの可能性を、今回の講座では教えていただきました。捨てて燃やしてしまうだけの生ごみも、資源として活用することによって新たなクリーン・エネルギーへと生まれ変わらせることができるということを学びました。
多田先生、お手伝いいただいた学生の仲野さん、そして今回の講座に参加してくださった皆さん、ありがとうございました。
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