「手製本を学ぶ −使い残しのノートを使い切ろう!−」【サロン講座】
投稿日:2022/03/10
たまきさんサロンスタッフです。
2月26日(土)に、『手製本を学ぶ-使い残しのノートを使い切ろう!-』と題したサロン講座を開催しました。
講師には和綴じ製本作家の永澤裕子(ながさわ ゆうこ)さんをお迎えしました。永澤先生は、仙台市内をはじめとした近隣の文化施設において、本の修理や和綴じの技術を多くの方に知ってもらうための講座や講習会を数多く開催しています。先生の講座では、毎回参加者自身が実際に製本実習をしながら和製本の技術を学んでいます。
今回の講座では、副題にあるとおり「使い残しのノート」を仕立て直して、再利用(リユース)する技術を学びます。一冊のノートを最後まで使い切るのはなかなか難しく、何も書かれていない白いページを残したまま、引き出しにしまわれているノートをお持ちではないでしょうか?その使い残しの部分を再利用して、新しいノートに仕立て直します。
今回は、和製本で言う「粘葉装(でっちょうそう)」に近い糊綴じ方法で「角背」に仕立てた「中身」に、中身と同じ寸法の簡易な「切り付け表紙」を着せます。
[T] 中身をつくる
ノートから使い残しのページを取り出し、化粧断ち(けしょうだち)の要領で背側を切りそろえる。複数のノートを寄せる時もこの要領で一番小さいサイズに切りそろえる。
切りそろえた背の辺をわずかずつ繰りのべし、その部分にのみ糊をつけて、元のように四辺を揃える。糊付けした辺を指で数回しごき、できた「背」を補強するために4p幅の丈夫な和紙の中央を貼り付けて背固めとする。
※製本の場合、切りそろえる時以外にも、厚紙を断つ時もカッターを使います。「化粧裁ち」のコツは、体を半身に構えて、刃を立てずに寝かせて引くことと、カッターの刃先を折って、常に切れる刃を使うことです。中身をいっぺんに切ろうとして刃を立ててしまいがちですが、中身を定規でしっかりと押さえて二、三枚ずつゆっくり断裁しましょう。
[U] 表紙をつくる
※表紙は製本の顔になる部分なので、素材的に丈夫で、見返し紙と組み合わせてデザインとしても面白い物を選びましょう。
今回は、仙台市内の特定非営利活動法人「多夢多夢舎(たむたむしゃ)中山工房」さんで作っている米袋を表紙用に使用します。これは、廃品の紙の米袋を揉んで柔らかくし、色付けしたアップサイクル製品です。
見返し紙は包装紙から選びました。
[T]でできた中身の寸法を正確に測り、それに合わせて表紙の芯になる地券紙(ちけんし)を切り出す。この地券紙に紙を貼って表紙をつくるが、今回は身近にある厚紙を使うことを想定し、あらかじめ地券紙とアップサイクルされた米袋を貼り合せたものを使用する。中身を合わせてみて、少し大きめに表紙を断っておく。
[V] 中身と表紙を貼り合せる
表紙の裏面中央の中身の「背」を固定する部分に、3cm幅で糊を指でよく擦り込み、中身の背に貼った和紙の部分を貼り合せる。折りへらを使って外側からもしっかり貼りつける。
※製本では、正確な折り目をつけるために「折りへら」を使用します。糊づけした部分を押さえるためにも使える優れた道具です。
[W] 見返し紙を貼る
表紙の表見返しと裏見返しには、選んだ紙の裏面に糊へらで糊を均等に引いて貼る。見返し紙の余分は断ち落とし、表紙は小口に合わせて切り揃える。(今回の見返し紙は、製本の強度とは関係のない、いわゆる「化粧貼り」です)
※製本では、広い部分につかう糊は「塗る」のではなく「引く」と言い、糊へらを使って紙の上、中央部分から八方に薄く広げます。こうすることで、余分な糊や糊のついていない部分が出ず、美しさと強度が得られます。〔本来は糊刷毛を使う作業ですが、初めての方にも糊の量がわかりやすいようにへらを使用しています〕
[X] 養生
糊のはみだしがないことを確認し、見返しに和紙を当てて水分を吸収しながら、押し板を上に乗せて糊が乾くまで養生する。
今回の講座では、使い残しのページを残したまま捨てられてしまったかもしれないノートを、リユースの意識と手作りによるひと手間をかけることによって、味わいのある表紙の新しいノートとして再生できるということを学びました。
また、表紙などの部材もできるだけ紙を再利用し、SDGsの観点から「紙の命を使い切る」ことを心がけました。
まだまだ奥の深い和製本の世界ですが、たまきさんサロンではこれからも永澤先生に素敵な技術のご教授をお願いしたいと考えています。
永澤先生、ありがとうございました。ご参加いただいた皆さま、長い時間お疲れさまでした。
★紹介しきれなかった写真集★
【今回使用した道具類】 |
【中身を繰りのべする】 |
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