生きものこぼれ話 令和5年度「将軍も愛でた虫の声を楽しむ会」を開催しました!
投稿日:2023年10月24日(火)
仙台にあるまじき長引く猛暑に見舞われた今年。それでも市内では8月末頃からは、夕暮れ時になると少しずつさまざまな虫の声が聞こえてくるようになり、その音色にひとときの安らぎを感じた方も多かったのではないでしょうか。
海外では鳴く虫の音色を「騒音」と感じる地域が多いなかで、日本には古来、虫の声を秋の風物詩として愛でる文化がありました。実は「仙台市の虫」も、鳴く虫の代表「スズムシ」だということをご存じでしたか?
◆「将軍も愛でた虫の声を楽しむ会」とは
仙台市では、市ゆかりの生きものに注目し、その魅力や大切さを伝えるプロジェクト「生物多様性保全推進事業〜感じる、つながる、杜の都の生き物語〜」のひとつとして、鳴く虫に親しむ会を、毎年秋に市内の市民センターと共催しています。今年は9月に、市内4カ所(幸町・将監・西多賀・旭ケ丘)の市民センターで「将軍も愛でた虫の声を楽しむ会」を開催し、各地域の児童・保護者のみなさんにご参加いただきました。タイトルの〈将軍も愛でた〉とは、仙台のスズムシが音色の素晴らしさから珍重され、江戸時代には伊達家から時の将軍家へ献上されていたことに由来しています。
この会では、虫に詳しい講師の方々をお招きし、おはなしや屋外での観察ガイドをお願いしました。鳴く虫がテーマなので、虫たちが盛んに鳴き始める夕方に開会します。夕暮れ時からの屋外観察って、なんだかわくわくしますよね。
そして当日は、
- 屋内で「鳴く虫」について学ぶ
- 屋外に出て虫の観察・採集
- 再び屋内に戻り、その日に出会った虫について振り返る
それでは、会場ごとの様子をご覧ください。
◆9月2日(土)幸町市民センター(宮城野区)
【屋内講師】鈴木孝雄氏、高坂博之氏、鎌田博明氏、長岡智江氏(すずむしの里づくり実行委員会)【屋外講師】向井康夫氏(むかい * いきもの研究所)
幸町市民センターは、ショッピングセンターや大型商業施設の集まる市街地にあります。「市の虫」でありながら、野生下ではなかなか出会えなくなったスズムシの繁殖・普及活動を行っている「すずむしの里づくり実行委員会」のご協力のもと、この日は屋外でもスズムシを観察できるように準備を進めました。
@「すずむしの里づくり実行委員会」の方々から、スズムシと仙台との関わりや生態などを、映像や手作りの紙芝居を通して学びました。
Aセンター敷地内の児童館運動場をフィールドに、向井康夫氏のガイドで観察や採集を行いました。
B「ひげは長い? 頭はとがってる?」――屋内に戻り、向井氏による鳴く虫の見分け方資料を手掛かりに、自分たちで調べたり質問したりして、この日出会った虫について詳しくなりました!
幹線道路や商業施設に程近い立地にどのぐらい虫がいるのか、実施前はちょっと心配でしたが、杞憂でした! みんなで探した結果、スズムシ(※)、ハラオカメコオロギ、エンマコオロギ、カネタタキ、アオマツムシ、マダラスズ、クビキリギスという7種の鳴く虫が見つかりました。その他、バッタ4種、カマキリ1種、コウチュウ1種も観察できました。
※スズムシは「すずむしの里づくり実行委員会」があらかじめフィールドに放虫。
◆9月9日(土)将監市民センター(泉区)
【屋内講師】菅原美咲氏(仙台市博物館)【屋内講師】鈴木理氏、沓澤道宏氏(株式会社エコリス)
将監市民センターは、地下鉄南北線の終点「泉中央駅」から直線距離にして1km足らずの将監団地エリアにあります。屋外観察は隣接する将監ふれあい公園で行いました。
@仙台市博物館の菅原美咲氏による「虫と武将との関わりについて」や、鈴木理氏・沓澤道宏氏(株式会社エコリス)による「虫がいそうなところ」といった、さまざまな切り口から鳴く虫について学びました。
A草がうっそうと茂っていなくても、よく見るとたくさん虫がいます!
B振り返りの時間では、自分たちで捕まえた虫だけでなく、事前に講師側で採集しておいた鳴く虫たち(全12種類!)についても、じっくり観察ができました。
この日の観察フィールドは遊具類が設置された住宅地の公園で、短い草が地面を覆うような植生を中心とする場所でした。あらかじめ「虫のいそうなところ」を教わってから観察を実施したこともあって、エンマコオロギ、ハラオカメコオロギ、クサキリ、ヒメクサキリなど、さまざまな鳴く虫に出会うことができました。
◆9月23日(土祝)西多賀市民センター(太白区)
【屋内講師】宮ア佳彦氏(仙台市科学館)【屋外講師】黒川周子氏、松敬一氏、菅原幸彦氏(公園緑地協会)
仙台市南部の郊外に位置する西多賀市民センターでは、屋外観察は徒歩で10分ほどのところにある天沼公園に移動して実施しました。
@仙台市科学館の宮ア佳彦氏に、生きたスズムシと、宮城県・アジアの鳴く虫を集めた貴重な標本を展示していただき、食物連鎖のことや、私たちの暮らしを虫がどのように支えているかなど、生物多様性の観点からお話ししていただきました。
A観察の前に、自然観察レンジャーの黒川周子氏・松敬一氏・菅原幸彦氏から、捕虫網の持ち方やミニペットボトルを使った虫の捕まえ方レクチャーが。ペットボトル方式は、網がなくても、小さなお子さんでも捕まえやすいというナイスアイディア!
Bミニペットボトルは振り返りの時間でも大活躍! みんなが捕まえた虫の形・長さや色などの細部を見比べたり分類したりするのにとても便利でした。
フィールドとなった天沼公園は溜め池を囲んで整備された親水公園なので、鳴く虫はもちろん、マイコアカネやアカガエルといった水辺の生き物たちも頻繁に現れました。この日は、コオロギ・バッタ・キリギリス類の鳴く虫が13種、音色だけ確認できた虫が2種、その他3種と、たくさんの生きものに出会うことができました。
◆9月30日(土)旭ケ丘市民センター(青葉区)
【講師】鈴木理氏、沓澤道宏氏(株式会社エコリス)旭ケ丘市民センターは、地下鉄南北線「旭ケ丘」駅前にあります。この日の屋外観察は、地下鉄ホームからも見える、仙台市民の憩いの場・台原森林公園で実施しました。
@最初に、講師の鈴木理氏、沓澤道宏氏(株式会社エコリス)から、仙台にいる身近な鳴く虫についてや、鳴く虫の音の出し方、好む場所など、生態に関する内容を中心にお話を伺いました。
Aこの日はあいにくの雨。台原森林公園での屋外観察は早々に切り上げることに……。それでも、クサキリやヒキガエルなどを見つけることができました。
B早めにセンターに戻ったので、屋内で鳴く虫の観察を行いました。講師側が事前に採集したさまざまな鳴く虫たちを教材に、間近にじっくり観察しながら詳しく学ぶことができました。
雨天のため、屋外での観察はあまりできませんでしたが、その分、屋内で生きた虫をじっくり観察できたことで、子どもたちからはたくさんの質問が出ました。
講師陣がご用意くださった虫たちのなかには、今年のいずれの屋外会場でも、声はすれども発見はできなかったカンタンやハヤシノウマオイ(スイーッチョン)などもおり、しっかり観察することができました。
◆松尾芭蕉氏も同行!
今年の「将軍も愛でた虫の声を楽しむ会」では、4カ所すべての会場で、お馴染みの松尾芭蕉氏(奥州・仙台おもてなし集団 伊達武将隊)にもサポートしていただきました。博識で虫にも詳しい「芭蕉さん」。虫捕りの匠として子どもたちから尊敬のまなざしを集めていました。
◆今年の会を終えて
やはり参加者は虫好きのお子さんが多く、観察フィールドに着くや否や「虫ゲット!」している虫捕りマスターや、講師も舌を巻く虫博士がいましたが、中にはそうでない子や、虫が苦手な保護者の方もいらっしゃいます。それでも、終了後のアンケートからは、参加されたみなさんが思い思いに楽しんだ様子が伝わってきました。また、「虫にさわれなかった子がさわれるようになった/すすんで捕まえにいくようになった」「つかまえられなかったけど、見方がわかってよかった」「虫が苦手で付き添いで来ただけだったが興味を持てるようになった」といった声が寄せられたのも印象的でした。
さらに、いずれの会場でも「身近にこんなにたくさん(種類/数)の虫がいたことに驚いた」という趣旨のコメントがみられたように、ささやかな草むらにもさまざまな鳴く虫たちがいて、懸命に命をつないでいることがわかりました。
虫が好きな人はもちろん、苦手だった人でも、どんな生きものかを「知って、観察し、ふれてみる」ことで関心が芽生え、それが生物多様性を意識した暮らし方につながっていくのかもしれません。
来年また、鳴く虫の季節がやってきたら、身の周りのちょっとした茂みから聞こえる音色に耳を傾けて、ぜひ、観察もしてみてくださいね。
《こちらもどうぞ》
■生きものが奏でる音風景(音源ダウンロード)
⇒スズムシをはじめ、市内各所で採録された「鳴く虫たちがいる音風景」をお楽しみください。スマートフォンの着信音やアラーム音などの私的利用にご使用いただけます。
■生きもの動画チャンネル
⇒仙台市の虫「スズムシ」や日本一美しい声で鳴く「カジカガエル」などの生きもの動画
■生きもの生息地マップ
⇒市内のカジカガエル生息地を公開。情報も募集中!
◇仙台市環境局公式Instagram
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